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牝獣の哭く夜
第21章 全裸の早朝散歩
 幾重にも重なった樹木の枝葉で、辺りは薄暗かった。
 けれど、緑と褐色の背景にして、美貴の裸身はくっきりと白く目立つ。

 ブラウスやスカートはおろか、ブラジャーもショーツも脱いだ姿。
 かろうじてハイヒールは履いていたが、オフィス街の公園で、乳房もお尻も長い脚も、飾り毛を剃り上げられた女性器すら丸出しだった。

(もう……本当に気が狂いそう……)

 いや、すでに狂っているのかもしれない。
 まともな精神でこんな状況に耐えられるはずがなかった。

 熱で朦朧としたような頭で、小走りに次の木陰まで進んだ。
 手で押さえたままの乳房が、嫌になるくらい、たわたわと揺れた。

 しばらく息を整える。

 涙で霞む眼で、公園の裏のオフィスビルを見上げた。
 朝日をあびて、窓ガラスがきらきらと眩い。
 〈クリエイティブ・ビュー〉が入っているビルだ。

 いつもの職場に行けば、着替えが置いてある。
 それだけが唯一、この羞恥地獄から抜け出す道だった。

 だが、今の美貴には、そこまでの道のりが、はるかに遠く感じられた。
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