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牝獣の哭く夜
第21章 全裸の早朝散歩
「沼田から、〈クリエイティヴ・ビュー〉のキーを預かった」

 運転席から身を乗り出して、諏訪はカードキーを振った。

「ここから会社まで素っ裸で歩いて行くんだ」

 諏訪の眼は楽しげに美貴を見下ろす。

「会議室に来い。僕はそこで待っている」

「そんな……むり、無理です」

 単に美貴を恥ずかしがらせるだけで、すぐに助けてくれるのだろうと、最初は思っていた。
 こうしてからかった後は、また激しく愛してくれるのだと。

 甘かった。

 レクサスは走り去り、何分たっても迎えに来てくれなかった。

 〈クリエイティヴ・ビュー〉があるビルは、公園の反対側にある。
 たどり着くには公園を通り抜け、広い車道をわたらなくてはならない。
 いくら早朝とはいえ、車も通るだろうし、公園にも誰かしらいる可能性は高い。

 妙齢の女性が全裸で歩いていれば、すぐに警察に通報されるだろう。

(でも、龍彦さんの望みなら……)

 薄明のなか、自ら歩き出すしかなかった。
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