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牝獣の哭く夜
第21章 全裸の早朝散歩
 ビルの前を駆け抜ける時、ちらっと四階の窓を見上げた。
 ブラインドが少しだけ動いたような気がした。

(龍彦さんが、あそこで待っていてくれる)

 そこは会議室の窓だった。
 あそこにたどり着ければ、諏訪がいる。
 服もある。

 死ぬような思いで道路を渡りきり、オフィスビルの横手に曲がった。

 夜間通用口の暗証番号キーを押すときは、指がふるえた。
 すばやく中に入る。ドアに背をもたせて、はあはあと息を継いだ。

 エレベーターはつかえない。
 他の階で扉が開いて、もし誰か人がいたら、それで美貴の人生は終わりになる。
 裏階段をそろそろと上がってゆくしかなかった。

 誰もいないことを祈りながら、階段を登る。
 なんとか四階にたどり着いた。

 ドアにカードキーがぶら下げてあった。

 オフィスに入ると、両手で股間を押さえた情けない格好で、諏訪が待っているはずの会議室に向かう。
 見慣れた空間で、自分の破廉恥な格好がより意識された。
 羞恥に意識が飛びそうだ。
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