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牝獣の哭く夜
第3章 拘束ホテル
 ベッドに横になっていた。

 部屋は間接照明なのか、ほのかに明るい。
 内装もレイアウトも記憶になかった。少なくとも、美貴のマンションではない。

 ホテルの一室のようだ――

 と思った瞬間、アルコールでぼやけた頭に、警告音が鳴り響く。

 ベッドの横を見た。
 怖れていたような、男の姿はなかった。

 顔だけ上げて自分の身体を見下ろす。

 今朝、家を出たときと同じ、チャコールグレーのスーツ姿だ。
 ジャケットは脱いでいたが、ブラウスもタイトスカートも、やや乱れてはいるものの、ちゃんと身に着けていた。
 ストッキングにもショーツにも違和感はない。

 ひとまず、ほっとする。

 何時だろうと思い、腕時計を見ようとした。
 時計の代わりに、藍色の革製ベルトがあった。ベルトは両手首に嵌められていた。

(なに、これ?)

 腕を思いっきり引っ張ってみた。
 革ベルトについたリングにロープが通され、ヘッドボードの両脇にくくられて、ばんざいの形から動かせない。


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