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牝獣の哭く夜
第3章 拘束ホテル
 拘束されているのは腕だけではなかった。

 両足首を揃えて、同じような拘束具でベッドと固定されていた。ハイヒールを脱がされた足先が心もとない。

 何度かあらがってみたが、ベッドの上をずり上がることも、身体を回転させることも無理だった。

 あまり暴れるとスカートがまくれそうで、しばらく試みたあと、美貴は動きをとめた。

 時間がわかるようなものはないかと、ベッドの周りを見廻す。

 サイドテーブルに円筒型の傘がついたランプや白い電話機と並んで、小さな置時計があった。
 デジタル数字が一時二十六分を表示している。
 カーテンの隙間からうかがえる外の雰囲気から、深夜の一時だと思われた。

(みんなと別れたのが九時半ごろ――あれから四時間近く経っているってことか)

 再度、部屋の中を見廻した。

 窓のそばに丸テーブルと一人掛けソファ。ソファの背もたれに、美貴のスーツのジャケット。
 壁ぎわには、液晶テレビの乗ったライティングデスクと、大型のドレッサーが並ぶ。
 いつも持っているビジネスバッグはドレッサーの上に置いてあった。

 部屋はそんなに広くない。
 とはいえ、内装や調度品からビジネスホテルには思えなかった。

 それほど高級ではないシティホテルといったところか。

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