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牝獣の哭く夜
第24章 彼の眼差し 彼女の脚



(ああ、美貴さんっ、イカないでくれっ……)

 けれど、沼田の眼から見ても、彼女がイッてしまうのはもう時間の問題だった。
 狂熱の妄執に満ちた沼田の胸に、清冽な詞《ことば》が響きわたった。

 いやなんです
 あなたのいつてしまふのが――

 去りゆく智恵子への、高村光太郎の絶唱だ。

 そして男に負けて
 無意味に負けて
 ああ何といふ醜悪時でせう


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