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牝獣の哭く夜
第25章 牝獣の哭く夜



 牝獣《ひんじゅう》だ。
 沼田は思った。
 日野草城の淫句の美しき牝獣だ。

  牝獣《ひんじう》となりて女史哭く牡丹の夜

 これまでのさまざまな想いが、その折々の美貴の姿と共に甦った。

 はじめて上司に会った時のときめき。
 その才能を目の当たりにした時の感動。
 よかれと思ってやった作業に叱責を受けた時の屈辱。
 失敗を繰り返すたびに向けられる冷たい視線。

 そして、ソレムニティのコンペのために必死に頑張り、たった一度だけ優しい言葉をかけられた時の恍惚。

 ――これからもよろしくお願いしますね。

 あの気品と聡明さに充ちた女性が、いま、牝獣となって、旧友の身体に跨り、女の悦楽を貪っている。

 沼田の貧弱な男根がうち震えた。
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