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牝獣の哭く夜
第25章 牝獣の哭く夜


 美貴が沼田を見つめた。
 ふたたび、ふたりの視線が絡み合う。

「あなたと交わるぐらいなら、死んだ方がましよ」

 嫌悪の眼で沼田を誘った。

 その眼差しに胸がときめいた。
 あまりの美しさに気がふれそうだった。

「みんなに犯されて、ヒイヒイよがってたくせに。
 淫乱マゾの課長さんよぉ」

 おのれの顔を卑猥にひん剥いて、この気貴い生物《いきもの》を貶める。
 どんなに貶めても彼女は美しさを失わない。

 それでも、なお――

 沼田の魂は餓えていた。
 美貴と心が通じ合うなど、この世では決してありえぬ。
 骨の髄まで悟った。


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