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牝獣の哭く夜
第3章 拘束ホテル

 入ってきた背の低い肥満漢を見て、美貴は眼を疑った。

「沼田さん……!?」

 沼田峻一だった。スーツの上着を脱ぎ、ネクタイも外したラフな格好だ。

 どうして店で別れた部下がここにいるのか理解できず、それでもやっとあらわれた救いに美貴は安堵の溜息をついた。

「沼田さん、はやくこの腕のベルトをとって」

 美貴は手首を示して、ベッドのそばに立った沼田に頼んだ。

 しかし、沼田は肉のたるんだ頬をニヤついた笑みで歪めて、美貴を見下ろしているだけ。部屋の間接照明でも、額や首筋が脂汗でヌメっているのがわかる。

 眼が異様に輝いていた。

 ふだんから美貴は、沼田の細い目にじっと見つめられると、軽い嫌悪感を覚えていた。

 今の目つきはいつもに増していやらしく感じる。ベッドの上に無防備な姿をさらしているせいもあるのだろうか。

「沼田さん、どうしたの? はやくほどいてっ」
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