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牝獣の哭く夜
第3章 拘束ホテル
 焦る美貴に取り合わず、沼田は平然と言った。

「それは無理ですねえ。こんな格好にして欲しいて頼んだのは、沢村さんなんだから」

「え……どういうこと?」

 美貴は困惑した。
 沼田の言葉の意味が理解できない。

 沼田は汗臭い顔を美貴の美貌のすぐ近くまで突き出して、わざとらしく笑った。

「昨夜のことを覚えていらっしゃらないんですか、沢村さん」

「課の飲み会のこと?」

「そう。飲み会で課長はずいぶんとワインを飲んでいらっしゃいましたからねえ。正体をなくしても不思議じゃないですよ。駅まで歩くのもおぼつかないくらいで、俺が支えてあげないと、その場に座りこんじゃいそうでしたもの」

 たしかに駅まで歩くのがひどくつらかったことは記憶にあった。その時、誰かに腕を支えられたのも、かすかに覚えている。

「俺がやっとの思いでタクシーに乗せてあげたんですよ。歩けない女性を抱えて、もう大変だったんだ」

「……それは申し訳なかったわ」
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