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牝獣の哭く夜
第3章 拘束ホテル
 そこで沼田は頭を掻きながら、テレ笑いをした。

「でも、酔ってたから本心が出るってこともある。俺もちょっとうれしかったかな。いつも冷たい沢村さんが、そんなに俺に気があったのかと思うと」

「ふざけないでっ。だれが――」

 不遜な言い草にカッとして、思わず嫌悪の声を上げようとした。

 しかし、ここで沼田を怒らせたら困ったことになると気がつく。美貴は言葉を飲み込んだ。
 まず、この拘束を解いてもらうことが先決だった。

「わかったわ。沼田さんにご迷惑をかけたことはあやまります。酔っ払って、ずいぶんとひどいことをしたみたいで、ごめんなさい。ね、だから、お願いだから、この手枷をはずしてくれない?」

 だが、沼田はそんな美貴の懇願を無視して、かってにしゃべり続けた。

「いやあ、沢村さんたら、ホテルの部屋に入るなり、抱きついてキスを迫るもんだから、困りました。いくら俺でも、上司といきなりそんなことできませんしねえ。そしたら、ベッドに縛りつけて犯して欲しいって頼むんだよ。沢村さんがそんなM趣味をお持ちとはね。くふふ」

 含み笑いがいやらしい。

「仕事のストレスが溜まってるんじゃないですか? でも、縛らないと暴れそうな雰囲気でねえ。そういうわけで、とりあえずおとなしくしてもらうために、こうしてベッドに拘束させていただいたわけです」

「そんなこと――あ、あるわけないわ」

 美貴は恥辱に顔を赤くして叫んだ。
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