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牝獣の哭く夜
第1章 恥辱のはじまり

「わかってるわよっ」

 美貴は秀でた額にうすく汗を浮かべて、声を尖らせる。

「やればいいんでしょ」

「そんなヤケクソな言い方はないよなあ。ビジネスでは礼儀が大事ですよ。お願いする時は、なんて言えばいいんでしたっけ、課長」

 怒りで頬が紅潮するのがわかった。

 しかし、ここで言い争いをしていれば、ますます事態は悪化する。
 美貴は唇を噛みしめると、不本意な台詞を絞り出した。

「……や、やらせて……いただきます」

「小さくて、よく聞こえないんですけど」
 耳に手を当てて、沼田が薄笑いを浮かべる。

 美貴はぎゅっと瞳を閉じた。

(……負けちゃだめよ。こんなことぐらい、たいしたことじゃないでしょ)
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