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牝獣の哭く夜
第7章 彼女の靴下
「では、こちらはこの素敵なおみ脚を」

 沼田は憧れの上司の足元にしゃがんだ。

 ちょうど顔のあたりに上司の股間がくるが、わざとそこには眼を向けない。

 おいしいオカズはあとまわし。
 まずはこの魅惑的な美脚を味わおうと、と猿臂を伸ばしていく。

「薄汚い手で触らないでよっ」

 片足で沼田を蹴ろうとして、美貴は体制を崩した。
 ロープがたわみ、手首に革ベルトが食い込むのが痛々しい。

 かろうじて足指が床にとどく状態では、所詮、ろくな防戦もできないのだ。

「いくら上司の命令でも、聞けないね」

 なるべく下品に見えるように、沼田は歯を剥きだして笑った。
 自分の醜悪さは誰よりも身に染みている。

 足首からふくらはぎにかけて、無遠慮に両方の手のひらで撫でまわした。

 まだ湿っぽいストッキングを透して、肉の弾力が伝わってくる。
 つま先立ちのためか、さきほどベッドで味わった時よりも、引き締まった感触だった。

 柔らかい脂肪の下に、躍動感のある筋肉の張りが感じられる。
 スポーツクラブででも鍛えているのかもしれない。

 三十路の女性らしく、ふくらはぎにはそれなりに肉がついているのだが、膝から足首までが長いため、ほっそりとスリムに見える。

 ストッキングのサラサラした手触りと、柔らかく弾力のある肉の感触。
 心地よい肌の温もり。

 そのすべてが愛おしかった。

  シュミーズはなほ取去るべかりしが
  つひに彼女の靴下は
  彼女の皮膚の一部なりしか

 大好きな詩の一節が浮かんだ。

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