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滲む墨痕
第4章 一日千秋
苦い過去に隠して葬るはずだった疑念は、ひとたび口に出してしまえば錆びつくような執着心に形を変え、増幅する。
「ガキの俺では物足りなかったか。だからあいつらを受け入れたのか。それとも、はじめからそれが目的……」
声を絞り出しながら詰め寄ると、美代子は泣き笑いのような曖昧な表情で力なく首を横に振った。
「違う、私は……っ」
潤んだ声が弾け、その目はあっという間に涙をためる。
「私は、誠二郎くんを」
「智の父親はどっちだ」
「……っ」
「あんたは野島屋をどうしたかったんだよ」
無慈悲な問いにすべての動きを止めた女の頬を、涙が一筋伝い落ちた。その顔はみるみるうちに引きつる。
「違うっ……違うの!」
すべてを失うかもしれない恐怖を覚えたか、美代子は泣き叫びながらすがりついてきた。