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滲む墨痕
第5章 尤雲殢雨
宣言されたとおり、さきほどより摩擦力が強まった。痛くはない。しかし、目に見えない脅威を払拭するかのように念入りにこすられる。
その圧力に身体が仰け反ると、背中に回された硬い手に押し戻された。その手が泡でぬるりと滑れば、服が濡れるのも厭わないと言わんばかりに密着してくる腕にしっかりと抱えられた。
鎖骨あたりを丁寧に洗われたあと、彼の無言の中にある要求を感じ取った潤は、恥じらいながらも胸を覆う手を下ろした。もとより本気で拒絶する気はないのだ。
一瞬だけ目を合わせてきた彼はまたすぐに伏し目がちになり、まるで寡黙な職人のような空気を纏って胸元を洗いはじめた。
ふくらみの周りをタオルが這う。柔肌は薄桃に染まり、こすられるたびにふるふると揺れるそれの先端では淡い色づきがぴんと上を向いている。
彼も気づいているはずだ。身体を抱く腕のこわばりが緊張を伝えてくる。にもかかわらず、彼は依然として表情を変えることなく先端を避け、タオルを持つ手を脇に滑らせた。