この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
滲む墨痕
第5章 尤雲殢雨
首をすくめ、こそばゆさに耐える。息のかかりそうな距離で向き合い、洗うという行為以上のことをされない静かな時間が過ぎてゆく。
脇、腰、腹、と手抜かりなく順番に洗われ、下腹部に差しかかったとき、藤田が手を止めて視線を上げた。なにかを問うような眼差しに、潤は無言を返す。
太ももの間にも墨をつけられた。その奥の茂みにも……。そう正直に伝えるべきだろうか。逡巡しているうちに、無情な筆がそこを舐める感覚が甦り、誠二郎の顔が浮かんだ。おぞましさに吐息が震える。
異変に気づいた藤田が訝しげに眉を寄せた。やがて、その目には憤りの色が射した。
「いったい、どこまで……」
かすかに揺れた声は煮え立つ心情を伝えてくる。背中を支える彼の手は熱く、素肌を溶かしてしまいそうだ。