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滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪
「先生……なにか違うと思ったら、髭を剃られたのですね」
「え、ああ、はい」
「やっぱりそのほうが素敵」
「今までが汚らしすぎましたから。子供たちに怖がられていなかったのが不思議なくらいです」
「いいえ。先生はもともと優しいお顔立ちですもの。お人柄が表われています」
自信ありげに言い切った彼女は熱弁を続ける。
「こちらの教室はとても評判がいいんですよ。先生のところに預けてから子供の集中力が上がったとか、落ち着きが出てきたとか、ほかのお母さんたちも言っています。先生のお人柄が子供たちにいい影響を与えているんです、きっと」
「いやいや……」
「私も子供と一緒に学ばせていただきたいくらいです。でも大人の生徒は受け入れていないのでしょう?」
「ええ、まあそうですね」
曖昧に答え、熱風のごとく押し寄せる気迫にたじろいでいると、今度はなぜか色気を増した視線を向けられた。