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滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪
「申し訳ありません……」
頭を下げて理由のない謝罪をしながら、潤は思い知る。戦力にならない者はこうして疎まれていくのだと。このままでは本格的に非戦力扱いされ、追い出されてしまうかもしれない。
そうやって萎(しぼ)む気持ちを慰めるように、『書道連盟』という言葉が唐突に頭をよぎった。
書家を名乗る者が必ずしもそのような組織に属しているわけではない。そう思いながらも、白く霞んだ淡い期待の輪郭が、くっきりと形を成していくのを潤は自覚した。
水と混ざり合い粘り気のある液体となった墨が、白い紙を美しい墨黒に塗り潰して固めてしまうかのように、その人の名前が黒々と浮かび上がり、べったりと脳裏に張りついて剥がれないのだ。