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官能書道/筆づかい
第1章 蔵鋒
 和室の障子を背景に、書作に専念する美人書家の横顔は真剣そのもので、清冽な覚悟さえ感じさせた。
 秀でた額から細く真っ直ぐ伸びた鼻筋は、高貴な香りをただよわせる。
 整いすぎて冷たい印象さえ与えかねない美貌だが、それを柔らかく緩和しているのが、わずかにしゃくれた鼻先だった。

(このとり澄ました美貌が、これからどんなふうに恥辱に歪むことか)

 鹿島は顎髭を撫でながら、心の中でニヤリと笑い、卑猥な眼差しを二十八歳の清楚な肢体に向けた。
 舐めるように見まわす。
 そうした眼で見れば、真っ直ぐに立てた筆軸に、細い指が優しくそえられたさままでが、淫情をそそる。

(あの指で、俺の太筆をしごかせて……)

 などと、不埒な妄想をめぐらせた。

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