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官能書道/筆づかい
第1章 蔵鋒
「涼子さんが、あんな店に行くとは思わなかったな。おまけに万引きなんて。正直、驚きました」

 涼子が渋谷のアダルトグッズ店で卑猥な商品を万引きしている写真だった。
 店員の眼を盗んで、男性器を象った淫具をバッグに入れかけている涼子の姿がはっきりと写った、デジタルカメラのプリントだ。

「これだけじゃあ不足というなら、動画もありますよ。どなたが何を万引きしたのか、はっきりわかるようなのがね」

 鹿島は出された冷茶をひと口呑んだ後、ゆっくりとグラスを廻した。
 氷がグラスにあたる音が涼やかに響く。

 涼子が何も言わないのに苛立って、鹿島は声に含める嘲笑と脅迫の調子を強めた。

「この写真を週刊誌に売り込めば、どうなるかな?

 今をときめく美人書家の松川涼泉が、渋谷のアダルトショップで電動バイブを万引きなんて、いかにも週刊誌が喜びそうなネタでしょう。
 ちょっとしたスクープになると思うがなあ。

 青年実業家と婚約したニュースがマスコミを騒がせたばかりですからね」

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