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いつかの春に君と
第4章 君が桜のとき
伽倻子はまるで、まだ幼い少年の岩倉を鼓舞するようにその腕を掴んだ。
…ちいちゃん、あんたもっとしゃっきりせなあかんえ。
そんなんだと好きな子に気づいて貰わらへんえ。
よくそんな風に岩倉の優柔不断な性格を戒めていた…。
…あの頃、岩倉の胸の一番甘酸っぱい場所を刺激するのはいつも伽倻子だった。
…だが、今は…。
岩倉は拳を握りしめる。
「好きですよ。笙子さんが。好きで好きでどうにかなってしまいそうなほどに好きです。
一目会った時から、僕の心は彼女のものだった。
愛しています。彼女を苦しめる全てのものから僕が守りたい。僕だけが守りたい。
ほかの誰にも触れさせたくない。彼女を他人に晒すのも見せるのも嫌だ。僕だけが笙子さんをこの腕の中に閉じ込めておきたい。
少しでも離れたくない。一分一秒ですら惜しい。
今も心は彼女の側にある。
なんで僕はここにいるんだろうと、忸怩たる思いです。
好きだ。大好きだ。愚かしいほどに彼女を愛している!」
伽倻子は昔のように、優しく微笑った。
その白く滑らかな手が岩倉の髪をそっと撫でる。
「ちゃんと言えるじゃない。
…それから、こんなに情熱的な愛の言葉を言う相手は私じゃないわ。
…笙子さん本人よ…」
「…伽倻子さん…。ありがとうございます」
岩倉は伽倻子の瞳に励まされるように、猛然と部屋を出た。
伽倻子は呼び鈴を鳴らして、メイドを呼ぶ。
「この京都行きのチケットをキャンセルして来てちょうだい。
…いいえ、違うわね。もう一枚追加で最終の汽車に替えて来て。もちろん一等車よ」
不思議な貌をしながらお辞儀をして下がるメイドを見送ると、伽倻子はそっと笑いながら煙草に火を点けた。
「…夜汽車の花嫁か…。なんてロマンチックなのかしら…。
…ちょっと羨ましい…」
…ちいちゃん、あんたもっとしゃっきりせなあかんえ。
そんなんだと好きな子に気づいて貰わらへんえ。
よくそんな風に岩倉の優柔不断な性格を戒めていた…。
…あの頃、岩倉の胸の一番甘酸っぱい場所を刺激するのはいつも伽倻子だった。
…だが、今は…。
岩倉は拳を握りしめる。
「好きですよ。笙子さんが。好きで好きでどうにかなってしまいそうなほどに好きです。
一目会った時から、僕の心は彼女のものだった。
愛しています。彼女を苦しめる全てのものから僕が守りたい。僕だけが守りたい。
ほかの誰にも触れさせたくない。彼女を他人に晒すのも見せるのも嫌だ。僕だけが笙子さんをこの腕の中に閉じ込めておきたい。
少しでも離れたくない。一分一秒ですら惜しい。
今も心は彼女の側にある。
なんで僕はここにいるんだろうと、忸怩たる思いです。
好きだ。大好きだ。愚かしいほどに彼女を愛している!」
伽倻子は昔のように、優しく微笑った。
その白く滑らかな手が岩倉の髪をそっと撫でる。
「ちゃんと言えるじゃない。
…それから、こんなに情熱的な愛の言葉を言う相手は私じゃないわ。
…笙子さん本人よ…」
「…伽倻子さん…。ありがとうございます」
岩倉は伽倻子の瞳に励まされるように、猛然と部屋を出た。
伽倻子は呼び鈴を鳴らして、メイドを呼ぶ。
「この京都行きのチケットをキャンセルして来てちょうだい。
…いいえ、違うわね。もう一枚追加で最終の汽車に替えて来て。もちろん一等車よ」
不思議な貌をしながらお辞儀をして下がるメイドを見送ると、伽倻子はそっと笑いながら煙草に火を点けた。
「…夜汽車の花嫁か…。なんてロマンチックなのかしら…。
…ちょっと羨ましい…」