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第4章 君が桜のとき

静かに笙子を引き寄せ、その小さく美しい貌を両手で覆う。
涙に潤んだ黒い瞳は神秘的な夜の湖のようだった。
「…先生が、私を選んでくださるなんて…夢のようです…」
「夢は僕ですよ。…貴女をこの手の中に抱けるなんて…信じられない」
二人の睫毛が触れ合い、そっと触れるだけの神聖なくちづけが交わされた。
羞恥のあまり俯いてしまう笙子に熱っぽく告げる。

「…愛しています。笙子さん。…僕と、結婚していただけますか？」
おずおずと見上げる笙子の瞳には喜びの涙が浮かんでいた。
「…本当に…私でよろしいのですか？…先生に相応しい女性は他にもたくさんいらっしゃるのに…」
笙子の肩を引き寄せる。
「貴女がいいのです。…いや、貴女でなくては駄目なのです。…それから、先生ではなく名前を呼んでいただけませんか？」
笙子の白磁のように白い頬が薔薇色に染まる。
煌めく美しい瞳が岩倉を見つめる。
「…千紘さん…」
「貴女の声で呼ばれると、僕の名前が美しい音楽のようだ…」
甘く囁くのに、笙子はにかみながら微笑む。
「…僕と結婚していただけますか？笙子さん」
「…はい。千紘さん」
握りしめた白い手に愛を込めてくちづけする。
「…ありがとう…！まずはご両親のご承諾を頂いてから京都に戻り、両親に話します。それから、婚約の準備をして…」
その言葉に笙子が密やかに…しかし凛とした意思を漲らせて首を振った。
岩倉は眉を顰めた。
「…笙子さん？」
「そんなに待てませんわ」
「…では…」
笙子は自分から岩倉の頬に手を伸ばした。
「もう、千紘さんと片時も離れたくありません…。
私を一人にしないで…」
信じられないほどの情熱的な愛の言葉を聞き、笙子を強く抱きしめる。
「笙子さん…！」