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いつかの春に君と
第4章 君が桜のとき
そっと腕を解きながら、やや緊張気味に尋ねる。
「…それでは…このまま京都にお連れしても…?」
笙子は満開の桜のように華やかに匂い立つように微笑った。
「連れて行ってください。
…そして、私をこのまま千紘さんのお嫁様にしてください…」
「笙子さん…!」
若く美しい恋人たちの甘やかな抱擁が交わされる背後から、感激した涙声が響いた。
「まあまあ…なんてこと…。
岩倉先生、少しお恨みいたしますよ。
笙子さんが嫁ぐときには精一杯の花嫁衣装や花嫁道具や贅を尽くした宝飾品を揃えて、誰よりも美しい花嫁姿を見せていただくつもりでしたのに…」
一ノ瀬夫人が涙ながらに語るのに、夫は温かく妻を宥める。
「良いではないか。岩倉先生ほどの素晴らしいお相手は世界広しと言えど、おられないのだから。
笙子が幸せになれば、結婚の形など関係ないのだよ」
笙子は岩倉の腕の中から両親を振り返り、感激の涙を流した。
「お父様…お母様…。ありがとうございます…」
夫妻が愛おしい娘を祝福するために歩み寄る。
岩倉は微笑みながら腕を解放し、笙子を両親の抱擁へと向かわせた。
…見上げる中空には、満開の桜が二人を祝福するかのようにふわりとその可憐な花弁を舞い散らせていた。
「…それでは…このまま京都にお連れしても…?」
笙子は満開の桜のように華やかに匂い立つように微笑った。
「連れて行ってください。
…そして、私をこのまま千紘さんのお嫁様にしてください…」
「笙子さん…!」
若く美しい恋人たちの甘やかな抱擁が交わされる背後から、感激した涙声が響いた。
「まあまあ…なんてこと…。
岩倉先生、少しお恨みいたしますよ。
笙子さんが嫁ぐときには精一杯の花嫁衣装や花嫁道具や贅を尽くした宝飾品を揃えて、誰よりも美しい花嫁姿を見せていただくつもりでしたのに…」
一ノ瀬夫人が涙ながらに語るのに、夫は温かく妻を宥める。
「良いではないか。岩倉先生ほどの素晴らしいお相手は世界広しと言えど、おられないのだから。
笙子が幸せになれば、結婚の形など関係ないのだよ」
笙子は岩倉の腕の中から両親を振り返り、感激の涙を流した。
「お父様…お母様…。ありがとうございます…」
夫妻が愛おしい娘を祝福するために歩み寄る。
岩倉は微笑みながら腕を解放し、笙子を両親の抱擁へと向かわせた。
…見上げる中空には、満開の桜が二人を祝福するかのようにふわりとその可憐な花弁を舞い散らせていた。