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いつかの春に君と
第4章 君が桜のとき
…あれからおよそ六年か…。
早いものだな…。
岩倉は机の上に飾られた笙子の写真に微笑みかける。
…見事なフランスレースの純白のウェディングドレスは、一ノ瀬夫人がせめてものと、大急ぎで神戸のデザイナーに依頼して特注で作り上げたものだった。
急拵えの岩倉の自宅の奥座敷に設えられた婚礼の間に、純白のウェディングドレスを身につけた笙子が現れた時にはそのあまりの美しさに、岩倉の両親、兄、兄嫁、兄の子ども達は思わず見惚れ、誰も言葉を発することが出来ないほどだった。
「…綺麗ですよ。笙子さん…」
岩倉も、そう声をかけるのが精一杯であった。
笙子は岩倉を見上げて、涙ぐんだ。
その涙は、胸に掛けられた極上の真珠よりも美しかった。
「…千紘さん…」
気を取り直した兄の腕白盛りの子ども達が囃し立てた。
「外国じゃあ結婚式のとき、花嫁と花婿はキッスするんやろ?千紘ちゃん、笙子ちゃん、キッスしてんか。キッス!キッス!」
「こら!あんた達、何ゆうてんの!」
気丈な兄嫁に頭を叩かれ、子ども達は逃げ回る。
岩倉と笙子は可笑しそうに笑い合い…そのまま見つめ合うとそっとくちづけを交わした。
一瞬、皆はその美しい二人にうっとりとし…やがて大歓声を上げた。
やんやの喝采を浴びて、笙子は頬を桜色に染めると岩倉の胸に貌を埋めてしまった…。
早いものだな…。
岩倉は机の上に飾られた笙子の写真に微笑みかける。
…見事なフランスレースの純白のウェディングドレスは、一ノ瀬夫人がせめてものと、大急ぎで神戸のデザイナーに依頼して特注で作り上げたものだった。
急拵えの岩倉の自宅の奥座敷に設えられた婚礼の間に、純白のウェディングドレスを身につけた笙子が現れた時にはそのあまりの美しさに、岩倉の両親、兄、兄嫁、兄の子ども達は思わず見惚れ、誰も言葉を発することが出来ないほどだった。
「…綺麗ですよ。笙子さん…」
岩倉も、そう声をかけるのが精一杯であった。
笙子は岩倉を見上げて、涙ぐんだ。
その涙は、胸に掛けられた極上の真珠よりも美しかった。
「…千紘さん…」
気を取り直した兄の腕白盛りの子ども達が囃し立てた。
「外国じゃあ結婚式のとき、花嫁と花婿はキッスするんやろ?千紘ちゃん、笙子ちゃん、キッスしてんか。キッス!キッス!」
「こら!あんた達、何ゆうてんの!」
気丈な兄嫁に頭を叩かれ、子ども達は逃げ回る。
岩倉と笙子は可笑しそうに笑い合い…そのまま見つめ合うとそっとくちづけを交わした。
一瞬、皆はその美しい二人にうっとりとし…やがて大歓声を上げた。
やんやの喝采を浴びて、笙子は頬を桜色に染めると岩倉の胸に貌を埋めてしまった…。