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いつかの春に君と
第1章 桜のもとにて君と別れ
…凍えそうな冬の夜のことだ。
鬼塚はふと遠くで妹の悲鳴が聞こえたような気がして、跳ね起きた。
…「いつまで兄妹で寝るつもりなの?ベタベタしちゃって気持ち悪い…。貴方たち、もう十二歳と十歳でしょう?別々に寝なさい」
癇性なシスターに叱られ、小春は数日前から女子部屋で就寝していた。
小春は鬼塚と引き離される時に、泣きべそをかいていた。
「泣くな、小春。何かあったら俺を呼べ」
「…うん…にいちゃん…」
必死で笑顔を作る小春を、底意地が悪いシスターが無理やり連れて行った。
…小春に何かあったのだろうか…。
鬼塚はぞわぞわと湧き上がる不吉な予感と不安に苛まれながら、裸足で駆け出した。
小春の悲鳴は宿舎から離れた小さな礼拝堂から聞こえて来る。
…また、意地悪なシスターが小春を折檻しているのかもしれない…。
人目をそば立てるほどに美少女の小春は、やっかみからかよくシスターに叱られては鞭を打たれていた。
その度に鬼塚が小春を庇い鬼塚は通常の倍、鞭打ちを受けるのだ。
「やめて…やめて下さい!にいちゃんを打たないで!」
小春は泣きながら鬼塚に縋り付いた。
「いいんだ、小春。にいちゃんは大丈夫だ。お前が打たれなきゃそれでいいんだ…」
笑ってみせると、小春は尚泣いた。
息を切らせながら礼拝堂に飛び込んだ。
…そして、目の前に広がる信じがたい光景に鬼塚は凍り付いた。
…孤児院の院長でもある中年の神父が、嫌がる小春を組み敷き、乱暴を働いていたのだ。
小春の白い寝巻きは真紅の血に染まっていた。
恐怖と痛みからか、小春は気を失っていた。
その蒼ざめた貌はまるで死人のようであった。
身体中の血液が逆流するほどの怒りと憎しみが鬼塚を襲った。
次の瞬間、鬼塚は獣のような叫び声を上げながら神父に食らいついていった。
「このクソ野郎!小春に何をした!」
全力で神父を突き飛ばし、小春を奪い返す。
…小春はぐったりと意識を失ったままだ。
寝巻きは乱暴に切り裂かれ、下半身は血塗れ状態だ。
…早く…早く手当をしなきゃ…!小春が死んでしまう!
小春を抱き上げ、駆け出そうとした鬼塚を神父が羽交い締めにする。
「行かせるものか。この子は私のものだ」
狂気を孕んだ濁った眼差しが鬼塚を捉え、醜悪な笑いを漏らした。
「馬鹿め、お前に何が出来るというのだ。貧しく身寄りもないちっぽけなお前に…」
鬼塚はふと遠くで妹の悲鳴が聞こえたような気がして、跳ね起きた。
…「いつまで兄妹で寝るつもりなの?ベタベタしちゃって気持ち悪い…。貴方たち、もう十二歳と十歳でしょう?別々に寝なさい」
癇性なシスターに叱られ、小春は数日前から女子部屋で就寝していた。
小春は鬼塚と引き離される時に、泣きべそをかいていた。
「泣くな、小春。何かあったら俺を呼べ」
「…うん…にいちゃん…」
必死で笑顔を作る小春を、底意地が悪いシスターが無理やり連れて行った。
…小春に何かあったのだろうか…。
鬼塚はぞわぞわと湧き上がる不吉な予感と不安に苛まれながら、裸足で駆け出した。
小春の悲鳴は宿舎から離れた小さな礼拝堂から聞こえて来る。
…また、意地悪なシスターが小春を折檻しているのかもしれない…。
人目をそば立てるほどに美少女の小春は、やっかみからかよくシスターに叱られては鞭を打たれていた。
その度に鬼塚が小春を庇い鬼塚は通常の倍、鞭打ちを受けるのだ。
「やめて…やめて下さい!にいちゃんを打たないで!」
小春は泣きながら鬼塚に縋り付いた。
「いいんだ、小春。にいちゃんは大丈夫だ。お前が打たれなきゃそれでいいんだ…」
笑ってみせると、小春は尚泣いた。
息を切らせながら礼拝堂に飛び込んだ。
…そして、目の前に広がる信じがたい光景に鬼塚は凍り付いた。
…孤児院の院長でもある中年の神父が、嫌がる小春を組み敷き、乱暴を働いていたのだ。
小春の白い寝巻きは真紅の血に染まっていた。
恐怖と痛みからか、小春は気を失っていた。
その蒼ざめた貌はまるで死人のようであった。
身体中の血液が逆流するほどの怒りと憎しみが鬼塚を襲った。
次の瞬間、鬼塚は獣のような叫び声を上げながら神父に食らいついていった。
「このクソ野郎!小春に何をした!」
全力で神父を突き飛ばし、小春を奪い返す。
…小春はぐったりと意識を失ったままだ。
寝巻きは乱暴に切り裂かれ、下半身は血塗れ状態だ。
…早く…早く手当をしなきゃ…!小春が死んでしまう!
小春を抱き上げ、駆け出そうとした鬼塚を神父が羽交い締めにする。
「行かせるものか。この子は私のものだ」
狂気を孕んだ濁った眼差しが鬼塚を捉え、醜悪な笑いを漏らした。
「馬鹿め、お前に何が出来るというのだ。貧しく身寄りもないちっぽけなお前に…」