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いつかの春に君と
第4章 君が桜のとき
「…笙子さん、どうしました?」
岩倉は少しも驚く様子もなく二人に歩み寄ってきた。
岩倉の後ろから、隠れるように立っていた春海がちょこんと貌を出し、少し心配そうな表情をして小春を見つめていた。
「…お母様…大丈夫…?」

小春は春海に気づくと、慌てて笑顔を取り繕い、立ち上がった。
鬼塚は春海に笑いかける。
「ごめんな、春海。俺がお母様に我儘を言って困らせてしまったんだ」
岩倉が春海と手を繋ぎながら近づき、にこやかに二人を見た。
「春海にどうしてもお母様と叔父様に会いたいと言われましてね。
今日の外来予約は午後からだったから一緒に出てきたのですよ」
小春は岩倉に頭を下げた。
「すみません。千紘さんはお忙しいのに…」
「大丈夫ですよ。たまには春海と出勤するのも楽しいものです」
岩倉の小春に対する愛情深さはその眼差しや言葉から如実に伝わってくる。
…小春は本当に良いひとと巡り会ったな…。
鬼塚は安堵した。
そして、春海を優しく見つめた。
「ごめんな、春海。お母様を独り占めしてしまって」
春海は小さいながらもきりりとした表情で首を振った。
「おじさまはお怪我をしたのだから、お元気になるまでお母様をお貸しします。僕はもう一年生だから寂しくありません!」

三人の大人は思わず一斉に笑い出した。
ややぎこちなかった雰囲気が一気に和らいだ。
「春海はいい子だな」
鬼塚は春海の頭を撫でた。
春海はくすぐった気に笑った。
「笙子、お前はもう春海と帰れ…。
…たまにはゆっくり春海と過ごしてやってくれ」

ここ数週間、小春は朝から夕方まで献身的に鬼塚の看護をしている。
いくら家政婦や乳母、岩倉の母がいるとはいえ、春海も母親に甘えたいはずだ。

小春は何か言いたげな貌をしたが、素直に頷いた。
「…明日、またまいります。
夕方から冷えますから羽織はお召しになってくださいね…。それからお薬は必ずお飲みになってね」
名残惜しげにこまごまと申し送りをする小春に安心させるように伝える。
「分かった。俺は大丈夫だから心配するな」

小春は春海の手を大切そうに握り、春海は嬉しげに小春を見上げ、仲睦まじく帰っていった。



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