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いつかの春に君と
第5章 いつかの春に君と
…今城はGHQ のカーキ色の制服を洗練された様子にりゅうとして着こなしていた。
制帽を取った髪はやや明るめに染められ、オールバックに整えられている。
すらりと高い背丈や彫りの深い華やかな貌立ちから、混血ではないかと錯覚するほど、物腰や雰囲気は日本人離れしていた。

…今城少尉…。
憲兵隊の潜入スパイ…そして、米軍の諜報部員だった彼がなぜここに…⁈
鬼塚は絶句しつつ、今城の貌を見つめた。

鬼塚の様子の変化に、郁未が心配そうに尋ねた。
「…鬼塚くん、どうしたの?知り合い?」
郁未は今城少尉の貌を知らない。
かつて手紙で知らせてくれたのも、鬼塚の上司だったからだ。
今は名前すら朧げな筈だ。
ここで彼を巻き込むことは避けたかった。

「…なんでもない。ちょっとした知り合いだ」
鬼塚の言葉に、今城は彼の胸中をすぐさま汲みあげたかのように、話を合わせた。
「そう、僕の昔の恋人だ。会いたかったよ、ハニー。
君に会いたくてわざわざ日本に来たんだ」
そう情熱的にかき口説くと、今城は鬼塚を強く抱きしめた。

郁未が息を飲んだ。
役人は軽薄に口笛を吹いた。
「アレックス、君のかつての恋人はこんなに小生意気な若造なのか⁈」
「ああ、この跳ねっ返りが可愛くてね…。
…そんな訳で、チャーリー。この学校の認可は問題ない。僕が主幹から認可証も貰ってきた。
…悪いが君は、ここの校長とそれらを確認してサインをして来てくれないか?今すぐにだ。
…僕は…ほら、彼と積もる話があるから…ね…」
艶めいた眼差しで役人をにやりと見遣り、鬼塚の頬にキスを落とした。

役人は下卑た笑いをあげながら、したり顔で頷いた。
「わかったわかった。お前はよろしくやってこい。
俺が手続きを進めておく。
おい、何処でサインすればいい?」
郁未が弾かれたように、慌てて役人を校長室にいざなう。
「こちらです。どうぞ…」
郁未は役人を先導しながら、鬼塚に後ろ髪が引かれる表情を残しつつ、校長室に消えた。

二人の姿が視界から消えると鬼塚は今城を突き放し、眼鏡越しに睨みつけた。
「今更何しに来た⁈このスパイ野郎!」


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