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いつかの春に君と
第1章 桜のもとにて君と別れ
男は鬼塚を自分の自宅に連れ帰った。
…市ヶ谷の小さな古い洋館だった。
聾唖の老婆がひとり…家事を任されていた。
老婆は男が帰宅すると入れ替わりに帰って行った。
…男は独り身のようだった。

…俺は、あの人の身の回りの世話をするのかな…。
養子にするとは言われなかったから、そうなのだろうけど…。
ぼんやりと殺風景な居間を見渡していると、男が鬼塚を書斎に呼んだ。

書斎も居間と同じく恐ろしく何もない部屋であった。
本棚と大きな書斎机と椅子…。
白い壁には絵すらも飾られていない。
まるで警察の取り調べ室のような部屋だ。

書斎に入るなり、男は尋ねた。
「お前の欲しいものはなんだ?」
男の鋭い視線とぶつかる。
即答しないと許されない雰囲気が漂っていた。
咄嗟に言葉が飛び出した。
「…力です」
男は男性的な眉を跳ね上げた。
「力?…腕力か?権力か?」
難しい言葉はよく分からなかった。
鬼塚はたどたどしく答えた。
「…強い力です。誰も俺に逆らえないような強い力…。
守りたい人を守れる力が欲しいです」

…小春を守れるような力が欲しい。
強い力が備わったら、小春に会いに行けるような気がしたのだ。
男は長い脚を組み直し、薄い唇を歪めて笑った。
「妹か?…妹は金持ちの夫婦に引き取られたようだな。
もうお前の庇護は要らないんじゃないか?」
鬼塚はむっとした。
「要らなければそれでいいです。…でも…強い力があったら、もしこの先小春に何かあっても守ってやれるから…」
男は立ち上がると、鬼塚を見下ろした。
「分かった。では私はお前に強い力を授けてやろう。
…誰もお前を阻まないような…お前に刃向かう奴は一人もいないような強い力だ」

鬼塚は眼を見張った。
「本当ですか?」
「…ああ。…だがその代償は…」
男の黒革の手袋が鬼塚の眼帯をなぞった。
優しいと表現してもいいような仕草であった。
…だが男は冷たく笑い、言い放った。
「私への絶対的な服従だ」


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