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いつかの春に君と
第1章 桜のもとにて君と別れ
…朝、目覚めると男の姿はそこにはなかった。
寝乱れている筈の自分は、きちんと夜着を身につけていた。

「…大佐…」
褥には男の名残りは微塵も残ってはいなかった。
…昨夜のことは、夢だったのだろうか…。
鬼塚は半信半疑になる。

…そういえば…
自分の身体に触れる。
肌はさらりと乾き、綺麗だ。
愛痕はもちろん、精を放った跡もない。

…けれど記憶には生々しく男の愛撫が刻まれている。

男はひたすら鬼塚の身体を愛おしみ、愛でるように弄った。
身体を重ね、鬼塚のまだ青い幼さが残る性器を愛撫し、声を上げさせ、初めての精を弾けさせたが、自分は何もしなかった。
鬼塚にも何もさせなかった。
男のそれは熱く硬いまま、鬼塚の下腹部に押し付けられただけだった。
鬼塚はひたすらに男に初めての甘く蕩けるような快楽を与えられただけだったのだ。

初めて男の手によって精を弾けさせた時、男は低い声で優しく囁いた。
「…いい子だ。徹…」
そして、甘く酔いしれそうなくちづけをふんだんに与えられた。
…その先のことは、靄がかかったように記憶になかった。
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