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いつかの春に君と
第1章 桜のもとにて君と別れ
翌日からも男の態度は以前と少しも変わらなかった。
鬼塚に厳しく朝稽古を付けると、そのまま風呂に入り軍服に着替え、憲兵隊本部に出かけてゆく。
甘い言葉も態度も何もなかった。

…変わったことは男が今までより早く帰宅し、間に合う時は一緒に晩飯を食べるようになったことくらいだった。

一緒に食事しても二人に会話などなかった。
二人の給仕をするヤエは喋らないし、静かな食卓だった。
けれど、時折男が見せる少し温度が高い眼差しは、鬼塚を感じたことのない温かな気持ちにさせた。

…男は週に一度、鬼塚が寝静まった夜半に部屋を訪れる。
見えない眼の瞼にくちづけされるのが夜の営みの合図だ。
昼間の冷淡な無関心が嘘のような、濃密で優しいくちづけが与えられる。
近頃は鬼塚も積極的にくちづけを返すことが出来るようになった。
男の肉厚な舌にまだ未熟な舌を絡める。
口内を蹂躙するように舌の愛撫を受ける内に、鬼塚のまだ未成熟な性器は直ぐに勃ち上がってしまう。
濃厚なくちづけを繰り返しながら、男は鬼塚のそれを握りしめる。
「…んんっ…!…あ…ああ…」
切なげな声を上げる鬼塚を男は、慈しみの眼差しで見つめる。
「悦いのか…?」
鬼塚は羞恥と高揚と興奮から男に抱きつく。
黙って頷くと、男が器用に鬼塚の寝間着を解きながら、緩急をつけた手淫を繰り返す。
「…はあ…っ…ん…っ…!」
「我慢をするな。もっと声を出せ」
やや掠れた低音で耳朶を噛まれる。
痺れるような快感に思わず男の逞しい胸に貌を埋める。
「…いい子だ。…徹…」
昼間の男からは想像も付かぬ、あやすような言葉が漏れる。
甘やかされるのは嬉しいが、子ども扱いされるのが悔しかった。
鬼塚は意を決して、男の性器に手を伸ばした。
…男の雄蕊は、鬼塚のそれと比べ物にならぬ程の長大さと硬さ…そして火傷しそうな熱さを誇示していた。
「…子ども扱いしないでください…」
むきになったように大人の性器を愛撫し始めようとする鬼塚に男は眼を細めた。
「…無理をするな」
鬼塚は隻眼で睨みつける。
「大佐、まだ一回もしてない…俺ばっかり…」
男は破顔した。
どきりとするような優しい笑顔だった。
「では、一緒に気持ちよくなろう…」
唇を求められ、二つの性器を大きな掌でひと纏めに握りしめられる。

…激しく色濃い悦楽の果てに、二人は同時に白い欲望の樹液を弾けさせていた。



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