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いつかの春に君と
第2章 花の名残に君を想う
リーダー格の上級生は振り返り、胡散臭げな眼差しで鬼塚を見上げた。
「…なんだ?貴様…」
鬼塚の黒いアイパッチに気づくと、眉を上げ、ああ…とにやついた。
「貴様が鬼塚か…。隻眼の新入生。話は聞いているぜ。
何でも士官学校始まって以来の逸材だと?」
上級生は鬼塚に近寄った。
鬼塚の背丈が自分とほぼ一緒なのにむっとする。
「教官たちにチヤホヤされて天狗になってるんじゃねえか?」
「怪我をしたくなければ早く出てゆけ。俺たちのお楽しみを邪魔すんじゃねえ!」
上級生たちに凄まれても、鬼塚は眉ひとつ動かさない。
「出て行くのはお前らの方だ」
「何⁈…貴様、それが上級生に対する態度か…⁈」
カッとなった上級生が鬼塚の肩を突いた。
その腕をすかさず捉え、床にねじ伏せる。
肩を逆手に掴まれ、上級生が派手な声を上げる。
「痛ッ!貴様ッ!何をするッ!」
鬼塚は感情を押し殺した声で告げる。
「俺は出てゆけと言った筈だ。聞かなかったのはお前らだ。俺は…弱い者に乱暴するクズが反吐が出るほど嫌いなんだ」
郁未は息を呑んだ。
感情を出さないように淡々と喋っているように見えて、その隻眼には強い憎悪の光が宿っているのが見て取れたからだ。
業を煮やした他の上級生が鬼塚の背後から飛び掛かろうとする。
鬼塚はまるで背後が見えるかのように身体をしなやかに交わし足払いを加え、ねじ伏せた。
痛みに悲鳴を上げながら、一人が叫んだ。
「貴様…!噂は本当だったんだな。貴様が人を殺したことがあると言うのは!」
鬼塚は大層可笑しそうに笑い出した。
…それは冷たい冷たい笑いだった。
「そうだ。俺は三年前に神父を殺した。後悔は微塵もない。俺は人殺しだ。その俺にお前らは挑む覚悟があるのか?」
その刹那、ねじ上げられた腕から鈍い破裂音がした。
「こ、こいつ!腕を折りやがった!」
パニックになり悲鳴を上げる上級生を、他の二人が慌てふためきながら引き摺る。
這々の体で部屋を逃げ出しながら、彼らは叫んだ。
「ひ、人殺し!貴様は気狂いの人殺しだ!人殺し!」
叫び声が暗い廊下を木霊した。
「…なんだ?貴様…」
鬼塚の黒いアイパッチに気づくと、眉を上げ、ああ…とにやついた。
「貴様が鬼塚か…。隻眼の新入生。話は聞いているぜ。
何でも士官学校始まって以来の逸材だと?」
上級生は鬼塚に近寄った。
鬼塚の背丈が自分とほぼ一緒なのにむっとする。
「教官たちにチヤホヤされて天狗になってるんじゃねえか?」
「怪我をしたくなければ早く出てゆけ。俺たちのお楽しみを邪魔すんじゃねえ!」
上級生たちに凄まれても、鬼塚は眉ひとつ動かさない。
「出て行くのはお前らの方だ」
「何⁈…貴様、それが上級生に対する態度か…⁈」
カッとなった上級生が鬼塚の肩を突いた。
その腕をすかさず捉え、床にねじ伏せる。
肩を逆手に掴まれ、上級生が派手な声を上げる。
「痛ッ!貴様ッ!何をするッ!」
鬼塚は感情を押し殺した声で告げる。
「俺は出てゆけと言った筈だ。聞かなかったのはお前らだ。俺は…弱い者に乱暴するクズが反吐が出るほど嫌いなんだ」
郁未は息を呑んだ。
感情を出さないように淡々と喋っているように見えて、その隻眼には強い憎悪の光が宿っているのが見て取れたからだ。
業を煮やした他の上級生が鬼塚の背後から飛び掛かろうとする。
鬼塚はまるで背後が見えるかのように身体をしなやかに交わし足払いを加え、ねじ伏せた。
痛みに悲鳴を上げながら、一人が叫んだ。
「貴様…!噂は本当だったんだな。貴様が人を殺したことがあると言うのは!」
鬼塚は大層可笑しそうに笑い出した。
…それは冷たい冷たい笑いだった。
「そうだ。俺は三年前に神父を殺した。後悔は微塵もない。俺は人殺しだ。その俺にお前らは挑む覚悟があるのか?」
その刹那、ねじ上げられた腕から鈍い破裂音がした。
「こ、こいつ!腕を折りやがった!」
パニックになり悲鳴を上げる上級生を、他の二人が慌てふためきながら引き摺る。
這々の体で部屋を逃げ出しながら、彼らは叫んだ。
「ひ、人殺し!貴様は気狂いの人殺しだ!人殺し!」
叫び声が暗い廊下を木霊した。