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いつかの春に君と
第2章 花の名残に君を想う
鬼塚は呆然と座り込む郁未にゆっくりと近づき、シャツを着せてやる。
そして感情を一切感じさせない口調で淡々と告げた。
「あいつらが言ったことは本当だ。俺は人殺しだ。お前みたいに純粋培養で育った人間とは違うんだ。
怖くなったのならもう俺には近づくな」
「…お、鬼塚くんは…どうして人を殺したの?」
勇気を振り絞って聞く。
「…俺の妹を無理やり犯した神父を殺した。
この眼はその時に負傷した。
だから俺は奴を殺したことを少しも後悔していない。
もし過去に戻っても同じことをするだろう。
…俺はそういう人間なんだ」
鬼塚の唇がぎゅっと閉じられた。
…そこにはかつての辛い経験への憤り、哀しみ…その他の感情が綯い交ぜになっているように郁未には感じられた。

郁未は思わず鬼塚の胸に抱きついた。
「鬼塚くんを怖くなんてならないよ!だって、鬼塚くんは僕を助けてくれた。…僕は…さっきすごく怖かった。それからすごく悔しかった。このままあいつらに無理やり乱暴されるのかと思ったら…悔しくて悔しくて堪らなかった。だから僕は鬼塚くんの気持ちが分かる!
もし僕が鬼塚くんでも、同じことをしたと思う!
だから…僕と友達になって…!」

鬼塚は不意に笑い出した。
それは先ほどの冷たい笑いとは異なる年相応の少年の素直な笑い声だった。
「なんだそりゃ。お前、支離滅裂だな」
笑われても郁未は滅気なかった。
「僕は鬼塚くんみたいになりたい!鬼塚くんみたいに強くなりたい!だから友達になって下さい!お願いします!」

鬼塚は肩をすくめると手を差し出した。
郁未を床から立ち上がらせると素っ気なく言い放った。
「好きにしろ」
郁未は瞳を輝かせた。
「友達になってくれるの⁈」
「好きにしろと言っただろう」
そうして鬼塚は郁未を振り返ることなくさっさとリネン室を後にした。

…後日談がある。
上級生の腕を折った鬼塚には翌日から一週間、懲罰房での謹慎の生活が待っていた。
鬼塚が事件の原因となった郁未の件を話さなかった為だ。
郁未は毎晩こっそり房を訪れ、母から持たされたとっておきのスイスのチョコレートを差し入れ続けた。

謹慎が明けてからの鬼塚は以前と全く様子は変わらなかった。
郁未が仔犬のように纏わり付いても表情も変えない。

鬼塚の噂は直ぐに広がり、恐れをなした上級生らはそれ以降、郁未に手を出すことは決してなかった。




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