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いつかの春に君と
第2章 花の名残に君を想う
翌朝、鬼塚は貌に差し込む夏の明るい日差しで眼を覚ました。
慌てて飛び起きる。
…いつの間にか、寝てしまったんだ…。

…大佐は…帰って来たのかな…。

鬼塚は急いで部屋を飛び出し、廊下を走り出す。
ノックもせずに男の部屋の扉を開けた。

…薄暗いひんやりとした寝室に置かれたベッドは一分の乱れもなく寝具が敷かれ、使われた様子はない。

…やっぱりまだ帰っていないのか…。

落胆の溜息を吐いていると、背後から声が掛かった。
「何をしている。朝稽古の時間はとっくに過ぎているぞ」
振り返る先には、男の見慣れた剣道着姿があった。
「大佐…!」
力が抜けるほどほっとして、言葉に詰まる鬼塚に淡々と告げる。
「早く着替えて来い。
私から一本取るまでは、朝食はなしだ」
聞き慣れた厳しい言葉に、じわじわと嬉しさが込み上げる。
「…はい…!」
鬼塚はさっさと遠ざかる大きな逞しい後ろ姿に、そっと苦笑いしながら返事を返した。
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