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いつかの春に君と
第1章 桜のもとにて君と別れ
「…お前、いいところのボンボンだなあ。…それならこんな時計の一つや二つ、要らないよなあ。…また買って貰えばいいだろう?お父様に」
悪餓鬼どもは弾けるように嗤った。

見るからに育ちの良さそうな…弱々しそうな少年はそれでも必死にリーダーの少年に食らいついていった。
「いやだ…返して!これ、大切な時計なの。宝物なの。返して!」
リーダーの悪餓鬼が舌打ちをし、乱暴に少年を突き飛ばした。
少年は地面に倒れこむ。
「うるせえ!大人しく寄越さねえともっと酷い目に合わすぞ!」
少年の華奢な脚を蹴り上げようとしたその瞬間…。

「やめとけ。自分より小さな子ども相手に、みっともないと思わないのか」
鬼塚は子ども達の前に姿を現していた。

…鬼塚の風貌を見た悪餓鬼どもは息を呑んだ。
無理もない。
黒いアイパッチの隻眼、黒い縞の着流し姿、片脚は不自由だ。
…どう見ても堅気ではない。

「…な、なんだよ…あんた…」
「俺はこのボンの用心棒だ。…お前ら度胸あるなあ。このボンのオヤジがどのシマの親分か…知らねえでカツアゲしてたのか?…俺がオヤジにご注進したら…お前らもうここでは暮らせねえぞ」
悪餓鬼どもは一斉に震え上がった。
…浅草一円を取り仕切るヤクザの組長の息子と勘違いしたのだ。
泡を食いながら逃げ出そうとするリーダーの少年の手から腕時計を取り返す。
「…俺がボスに返しておく」
隻眼の眼でにやりと笑うと、悪餓鬼どもは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

鬼塚はまだ地面に尻餅を突いている少年の元に戻り、手を差し伸べた。
「…怪我はないか?」
少年は鬼塚を見上げ、小さく頷いた。
「…はい…あの…ありがとうございます…」

鬼塚は隻眼の眼を見張った。
…どこかで見たような…懐かしいような貌立ちだったのだ…。
「ここは安全な場所じゃねえ。お前みたいな良いところのお坊ちゃんがウロつくには危険だ。
お前、母さんは?」
白い膝小僧に付いた泥を払ってやりながら、注意する。
「…はい。お母様は、はぐれたばあやを探しにいったの。…ここで待ってて…て言われたら、あのお兄ちゃん達が…」
少年は長い睫毛を瞬かせ先ほどの恐怖を思い起こすように形の良い唇を引き結んだ。
「…そうか。…じゃあ、母さんが来るまで一緒に待つか」
自分でも驚くような言葉が口から溢れ落ちた。
少年はぱっと鬼塚を見上げ、嬉しそうに頷いた。


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