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two roses & a lily
第7章 カウンセリング
ネットや大学のツテなどを頼りにカウンセリングにかかる。
本人が言うように精神の病ではないという診断を出す者や、原因がわからないという者ばかりで、医者探しに翻弄する日々が続いた。
学内外でメアリーも共に行動するものだから、周りからは怪しまれ、距離を置かれる。
“メアリーを共有する男達”と陰で噂され始めたが、孤立することをメアリーも僕も厭わず、ジョンに至っては、周りの環境に意識すら向かず気づいてもいなかった。
『精神異常ではないが、もっと深刻な状態です。
ネグレクトによる人格形成障害です。』
そしてようやく見つけたジョンに合うカウンセラーが診断した結果は厳しい現実を突き付けた。
「それって治るんですか?」
「君、症状名を理解したかい?」
ジョンを外してのカウンセラーとの診断。
「病気じゃないんだよ。言葉のまんま、彼には人格が上手く形成されていない。治す以前の問題だ。」
「では上手く形成させていくことは出来ないんですか?」
「私が診察対象を12歳までだと、最初にお断りした意味が解るかい?」
「子供でないと対処できないからですか?」
「端的に言えばそうだ。親や家族に育てられて子供は肉体的にも精神的にも成長する。
しかし、もっと内面の人格というものも形成されていく。
第二次成長期、性長ともいうが、その時期にまさに育てられた人格を自己のものへと形成させ完成させていく時期を過ぎてしまうと治療は更に難しくなるからだ。」
「どうしてですか?」
「治療といっても投薬するわけではない。基本的には退行治療になる。」
「退行、治療。」
「形成中の子供であれば、一年一年遡り形成の歪みとなった原因を突き止めて、そこからやり直すといった作業だ。」
「なぜ大人になったら出来ないんですか?」
「壊れた形で完成したものを退行させて、今以上に悪くなる可能性が高いからだ。
退行させて幼少期で滞留してしまう可能性もある。治療によって精神に異常を来す可能性もある。
今克服したい妹さんの死へのトラウマだけ取り除くなんて外科的にオペすることは出来ないんだよ。
だったら、そこに触れないように生活して今のままでいる方が彼には幸せだと思わないかね?」