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two roses & a lily
第1章 プロローグ
「マム、今日も起きてこないねぇ。」
「そうだね。ちょっと見てくるから、ジョアンナはトーストを食べてな。」
確かに、母が帰った気配がない。脱ぎ捨てた洋服や、お酒と香水の混じった匂いがない。
母の寝室を覗くと、もぬけの殻だ。
だが、こんな日も月に何回かある。そうすると夕暮れにはケーキを買って帰ってくる。
本当に母はいつ眠っているのだろう。
「ジョアンナ、今日はケーキの日だ。マム仕事が忙しいんだな。
アンが来るまでお留守番出来る?」
「うん、大丈夫だよ。お兄ちゃんの読んでくれたお話、お絵描きして待ってる。」
リビングにクレヨンと紙を用意すると、ジョアンナはおとなしくお絵描きを始める。
アンとは、シッターさんだ。
「お兄ちゃん学校に行くよ。アンも鍵を持ってるから、ベルが鳴ってもドアを開けちゃダメだよ。」
「わかってるよ。お兄ちゃん行ってらっしゃい。」
ジョアンナに言い聞かせて俺は学校に行く。
こんなこともしばしばあるもんだから、ジョアンナじゃないけど、ケーキを楽しみに鍵を掛けて家を出た。