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地獄
第29章 お仕置き
 坂本がある作業をしている。
 作業とは言っても簡単な物で、床にたくさんの新聞紙を敷いていた。
 レールを外し近くにはビデオカメラが埋めた砂山便所があり、そして鏡がある。この鏡はベッド近くにある鏡に比べて、一回り小さくいものの全身を写すことはできた。
 

 奈緒子は近くで正座をさせられ、その作業を見させられていた。
 女は気づかれないように、片手で足首の拘束具を触り留め金を外そうと試みている。
 しかし拘束具の留め金はダイヤル式の施錠のために、暗号を知らないとロック解除にはならない。もちろんそんな番号は知らない。
 

 これさえ……あっ! 首輪もか……。


 奈緒子はため息を、吐く。
 抜けられそうで、ぬけられない。逃げ出したくても、逃げられない。そんなジレンマに悲しくなった。


 坂本がセッティングを完了させた。
 ニタリと笑いながら、コクコクと頷いた。


「首輪にしても、足首の拘束にしても、簡単には外れんぞ!」
「!」
「鎖の音が異様になっていたからな。チャラチャラ……チャラチャラ……それだけ確かめてたんだろ?」


 坂本が言葉にしてやる。
 奈緒子の顔から、またしても血の気が引いていく。


「奈緒子、別に咎めん! ありがたく思え! しかしお仕置きは別だ。今から始める。これは次のプレイの前哨戦でもある」


 坂本が意味深なことを、口走る。
 脱走への咎めはないのは嬉しい。しかしその後が……。
 お仕置きは、次への前哨戦? 奈緒子が頭を捻る。
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