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地獄
第41章 経緯
 漠がスマホに出る。
 するとそこには、パソコンにあった男がいた。
 つまりは……


「またお会いでき光栄です」
「ふん! なんだ恐竜(ザウス)」


 会話が始まった。


「怖い顔をなさらないで下さい。私とて会社を追われた人間ですから」
「俺を追いやった恐竜(ザウス)に、言われる言葉ではない」
「貴方様はやり過ぎました。ただ私もやり過ぎたんですね」


 漠の喧嘩腰を恐竜(ザウス)が受け止め、そしてやんわりといなす。
 

「相変わらず喰えん奴だ」
「お互い様ですよ」


 日菜子はその様子を見ている。そして漠の様子に、少し驚いている。喧嘩腰の姿を、今の今まで目にしたことはなかった。
 いつも余裕綽々で、どこか小馬鹿にする男だ。
 

 ここまで攻撃的になるなんて……。


 日菜子は唇を舐める。
 異様に喉が渇いてきた。


「本題にはいりますよ。まずはありがとうございます! 私の提案を聞いて戴き、本当にありがとうございます」
「……恐竜(ザウス)、奈緒子を犯せと言ったのはお前だものな」
「何を仰りますか! 貴方様の経営されているマンションには、自分の女にする候補を固めていると聞いたことがありますよ」


 恐竜(ザウス)が、ニタはニタと笑っていた。


「その候補の一人と、私の可愛いお人形が一致したまでですよ」
「……なるほど、そのために学校を経営しているのか」
「まさか! そんなために経営していたら、子供が成長しません。それに市やら国やらが煩いですから」


 恐竜(ザウス)がため息交じりに、やるせない顔を見せた。


「とは言え、私の提案した『丼』をして戴き、本当にありがとうございます」
「『怖いんですか? 老いましたね』こんなことを言われたら、嫌でも動く! 特に恐竜(ザウス)! お前にはな」
「犯罪ですよ」
「お前もな!」


 漠がスマホの画面を睨みつけながら、声を上げる。恐竜(ザウス)は大声で笑い出した。


「確かに! 失礼しました。ここで電話を切ります、今から教育委員会の人達との会合ですので……一週間後、サイトに動画を上げますからそれまでに、編集をお願いします」
「……ふん!」
「『愛の証人』なかなか、いいですね。私の『テスト』はどうでしたか?」
「なかなか、良かった」
「ありがとうございます」


 恐竜(ザウス)が、テレビ電話を切った。
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