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女鑑~おんなかがみ~
第4章 憧れ
操子が高等女学校に入学した春、すでに隠居していたおじい様が亡くなられて、名実ともにお父さまが倉持木材の経営者となられた。
お父さまは倉持木材に婿養子として入られ、一人娘だったお母さまと結婚されたということで、以前から、もっと商売を大きくしたいという野心を持っておられたそうだ。だから、おじい様とは意見が対立することもあった。

お父さまは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ということわざが昔からお好きだった。
最初のころ、おじい様はこの「虎子」は美しいお母さまのことを指すのだと思っておられ、お母さまと一緒になりたくて、小さな材木商の婿養子になったのだと喜んでおられた。
 だが、ほどなくしてお母さまは、お父さまにとっての「虎子」は大きな財産なのだとお気づきになった。危険を冒してでも商売を大きくしたい、という意味らしかった。
それでもお母さまはお幸せそうだった。
おじい様が隠居して、お父さまが経営をするようになってから、急速に倉持木材は大きくなり、女中さんや職人さんの数も増え、お母さまもお着物をたくさん拵えたり、お芝居を見たりと、娘時代よりも贅沢をできるようになったからだ。

孝秀兄さまは中学の五年となり、高等商業をめざして試験勉強に明け暮れていた。お父様もお忙しそうで、操子のことなどは忘れてしまわれたのではないか、と寂しかった。

***************
そんなある日、小さな事件が起こった。
お父さまが新聞を読みながら、
「この頃、東京などでは大学生や女学生の自由恋愛が流行しているらしいな。困ったものだ」
とおっしゃったのだ。そのとき、これまで反抗などしたことのなかった孝秀兄さまが、
「お父さま、私は、互いに愛する者同士が結婚して家庭を持つのが良いと思います。
家のために、親が決めた相手と政略結婚をするなど、まるで徳川時代ではありませんか。
私が将来、妻を迎えるときには、自由恋愛をして、愛する人と結婚します。」
と大きな声で言ったのだ。

お母さまは、驚きながら言葉を濁し
「孝秀さんも、結婚なんてまだ先の話ですよ。でも自由恋愛もよいですね。
近頃は、よい御家柄のご子息やご令嬢ばかりが集まるお茶会やかるた会などもございますから、中学を卒業したら、そのようなところで、お相手を探すというのもよさそうかもしれませんね。」と同意した。
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