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女鑑~おんなかがみ~
第4章 憧れ
お兄さまはそれを無視して続けた。
「それよりお父様こそ、最近、怪しい人との付き合いが多いのではないですか。
僕が学校から帰ってきたときなど、見るからにヤクザ者のような客人が訪ねてきていることが多いではありませんか。
この前に訪ねてきていた、確か、若槻さんというような人、刺青もしているし、傷の痕もある。あんな人を家に上げるべきではないと思います。
おじい様が経営をされているときには、お客人はみんな上品な方ばかりだったのに。」
お母さまは一生懸命にとりなそうとするが、お兄さまは止まらなかった。
お父さまはかなり不機嫌で
「この前に死んだ先代に似て、お前は机上の空論ばかりで臆病すぎる。
そもそも、人間は平等だとかアカのようなことを言いながら、刺青のあるやくざはダメだというのは理屈が通らんだろうが。
いつも言うように『虎穴に入らずんば虎子を得ず』だ。裏の世界や一見危ないようなところにこそ、商売を大きくする鍵が隠れているんだ。」
本当にお父さまはこの諺がお好きだなあと操子は思った。
お兄さまも負けずに返す。
「お父さまはいつも、そうおっしゃいますが、このままではお父様は、虎穴で大きな虎に食われてしまうのではないかと心配です」
「馬鹿野郎、お前のほうこそ、自由恋愛などという軽佻浮薄な流行に乗って、つまらない女と面倒を起こすのは絶対に許さんぞ」
操子にとって、お父さまの言葉は予想通りであったが、お兄さまの言葉は驚きの連続だった。
素直な優等生だと思っていたお兄さまが、お父様に反抗したこと。そして、「自由恋愛」などというふしだらなものを、真面目なはずのお兄様が好んでいるということ。
「それよりお父様こそ、最近、怪しい人との付き合いが多いのではないですか。
僕が学校から帰ってきたときなど、見るからにヤクザ者のような客人が訪ねてきていることが多いではありませんか。
この前に訪ねてきていた、確か、若槻さんというような人、刺青もしているし、傷の痕もある。あんな人を家に上げるべきではないと思います。
おじい様が経営をされているときには、お客人はみんな上品な方ばかりだったのに。」
お母さまは一生懸命にとりなそうとするが、お兄さまは止まらなかった。
お父さまはかなり不機嫌で
「この前に死んだ先代に似て、お前は机上の空論ばかりで臆病すぎる。
そもそも、人間は平等だとかアカのようなことを言いながら、刺青のあるやくざはダメだというのは理屈が通らんだろうが。
いつも言うように『虎穴に入らずんば虎子を得ず』だ。裏の世界や一見危ないようなところにこそ、商売を大きくする鍵が隠れているんだ。」
本当にお父さまはこの諺がお好きだなあと操子は思った。
お兄さまも負けずに返す。
「お父さまはいつも、そうおっしゃいますが、このままではお父様は、虎穴で大きな虎に食われてしまうのではないかと心配です」
「馬鹿野郎、お前のほうこそ、自由恋愛などという軽佻浮薄な流行に乗って、つまらない女と面倒を起こすのは絶対に許さんぞ」
操子にとって、お父さまの言葉は予想通りであったが、お兄さまの言葉は驚きの連続だった。
素直な優等生だと思っていたお兄さまが、お父様に反抗したこと。そして、「自由恋愛」などというふしだらなものを、真面目なはずのお兄様が好んでいるということ。