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女鑑~おんなかがみ~
第6章 布団
若槻は、ふと思いついて懐から紙を取り出し、女衒に手渡した。
「よかったら、この廓を当たってみてくれないか。小さなところだが客筋はよいはずだ。
仕事には変わりがないが、それほど無体なことにはならんと思う。」

京でも吉原でもない、ある地方の城下町にあるむらさき屋という遊郭であった。
女衒もこの廓のことは知っていた。
「ああ、ここなら随分前にどこかの娘を連れて行ったことがありますよ。
聞いたところでは、女将が見るからにおっかない、きつい質の女で、遣り手も兼ねているが、その割には、年季まで勤めて、病気もせずに出てきてから、堅気になる女が多いですな。
あんまり変な客は上手に断っているんだろ」
「……きつい質の女か…」
若槻は一瞬苦笑した。
「旦那、よく行かれるのですか。なんなら旦那が話を通してくだされば」
「いや、俺は行けない。女将によると、俺は迷惑な変な人間だそうな」

女衒は、おそらく何か事情があるのだろうと思ったがそれ以上は聞かなかった。
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