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女鑑~おんなかがみ~
第6章 布団
女将も困惑していた。
嫌がっているのを無理やりにというのはさすがに気が進まないし、この廓を贔屓にしている客はみな節度があるので、そんな無体なことはしない。それは女将が経営を任されるようになってから気をつけてきたことだ。
他方、この娘をそのまま放っておいて、万が一恋人とやらが訪ねてきて手を取り合って逃げてしまわれると非常に困る。そもそもそれを避けるためにあの材木問屋はこの娘を遊郭に入れようとしたのだ。

夜には見かねて、別の妓に握り飯を届けさせたが、それもほとんど食べていなかったようだ。
恋とは何と悲しくて、恐ろしいものだろうか。
女将はしみじみと思った。

二日後に、恰幅のよい男が訪ねてきた。
倉持木材の経営者とのことであった。
「当店でかつて雇っていた者がそちらでお世話になっていると伺い……」
一見、腰の低い態度だったが、何か魂胆がありそうだった。
「当店としては、この娘がまた出てきて、当店の者と面倒を起こされると非常に困ると申しますか、その、恥ずかしながら…ですね」
何を言いたいのだろうか。
「ですからもともとは、外地とか遠方とか、そういう当店の者が近づけないようなところに、身売りをと、それが、どうやら伝え聞くところでは、若槻という者が、そちら様にと……」
要領の得ない会話が続いた。
「で、スエという娘は、もう客を幾人もとっているのでありましょうや」

これを探りにきたのか。一瞬迷ったが、正直に答えた。
「いえ、まだ、下働きをさせております」
「ははー、さようですか。それはいけませんな。このままでは、あきらめずに、うちの倅の奴が」
ようやくこの男の訪問の意図が分かった。
「何しろ、うちの倅は近々、山林を所有する県会議員のお嬢さんとその…縁談と申しますかですね。
 それで、なんと申しますか、うちの倅は、ワシとは違って、並外れた堅物でございまして、お宅さまのような商売を毛嫌いしとるところがございまして。
 ですから、さすがに、あの娘がお宅さまの商売にどっぷりと浸かってしまえば、さすがの倅もですなあ」

女将は自らも毒杯をあおるような心持で言った。
「承知いたしました。それでしたら、あなた様が、あの娘の最初のお客になられてはいかがでしょうか。あなた様でしたら、廓でのお遊びにもお慣れのお方とお見受けいたしますので」
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