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女鑑~おんなかがみ~
第6章 布団
納屋の隅で微睡んでいたスエのところに、年長の女郎である紅葉と千鳥が来た。
「スエちゃんが前に奉公していたお店の人が、スエちゃんに会いに来られたよ。」
「え、本当ですか」
スエは飛び起きた。
「そうだよ。客間でお待ちだから、風呂に入って支度しなさい。手伝ってあげるから」
千鳥がそう言って、スエを立たせ、風呂に入れた。
急に顔を輝かせ、風呂に入る姿に、女将と紅葉は顔を見合わせた。

スエは与えられた赤い襦袢を羽織り、小走りで千鳥に連れられて、客間に入った。

「久しぶりだな」
「え、大旦那様……」
「もしや、お前は孝秀が来ると思ったのか。」
「いえ、え、その、大旦那様、ご無沙汰を……」
辛うじて、最低限の挨拶だけをして後ずさり、部屋を出ようとするスエを、女将が入り口で押しとどめた。
「こちらの旦那様が、お前の最初のお客になってくださるんだ。ちゃんと言うことを聞くんだよ」
足がすくんで動けなくなったところを、女将と紅葉姉さん、千鳥姉さんで抱え、両手を頭の上に上げさせて床柱に括りつけた。
その間、千鳥姉さんは「ごめんね、堪忍してね」と繰り返していた。
スエは最初、バタバタと手足を動かして逃れようとしたが、いつの間にか身体は赤い布団の上に、載せられていた。

女将さんがスエの耳元で言った。
「ここまではしたくなかったんだけれど……

ただ、これだけは覚えておくんだよ
お前は、いろいろな不運が重なって無理やりここに連れてこられて、
可哀想だけれど、ここで括られたまま、無理やりに身体を買われるんだ
それはどうしようもないんだ
だから、お前は何も悪くないんだよ
その、タカ……ナントカという堅物で世間知らずの坊ちゃんだっけ、
その人に怒られたり蔑まれたりする道理は何もないんだよ
わかったね」
何となく腑に落ちて、スエは頷いた。
「じゃあ、あとはじっとして目をつぶっておいで」
スエは言われた通りに目をつぶろうとしたが、目をつぶるとやはり孝秀さまのお顔が浮かんだので、目を開けてあたりを見渡した。

赤いふわふわした布団の上に自分がいる…
忘れかけていた幼い頃の思い出が蘇った。
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