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女鑑~おんなかがみ~
第6章 布団
手を縛られて抵抗を封じられたスエの躰の上を、大旦那様の大きな手が何度も行き来した。
くすぐったいような違和感はあるが、辛いというほどではない。
乳房を揉まれたり乳首を摘ままれたりしながら、スエの頭のなかでは、これまで偶然、こわごわ覗き見ていた断片が徐々につながって全体像を形成していったが、特に悲しみも喜びもなかった。

それよりも、ふわふわの赤い布団、生地に光沢があって花模様で、綿がいっぱい詰まった布団の上に自分がいるのだ、ということが少し嬉しかった。

同時に大旦那様の変わり様に驚いた。
女中をしていたころ、大旦那様は三日に一度くらい、職人と女中を集めて短い訓話のようなことをされ、スエは一番後ろのほうでほかの女中たちと一緒に聞いていたものであるが、その姿は厳めしくて近寄りがたかった。
しかし今、スエの躰の上に舌や手を這わせる姿は、まるでこれまで餌をもらっていなかった犬のようで、滑稽でもあった。
大きなお店を経営する偉い方が、スエのような若い娘の躰をこのように求めるということが不思議な気がした。

ふと、孝秀さまのことが記憶をよぎったが、いつも颯爽と美しい孝秀さまがこんな飢えた動物のようなことをなさるとは想像できず、また想像したくもなかった。
不本意ではあったがこれでよかったのかもしれないと思い始めた。
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