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女鑑~おんなかがみ~
第6章 布団
身体が引き裂かれた私はもう死ぬのかもしれない
もう一度、孝秀さまに……と思っていると頭の上から
「これはきついな」というような声がして、その声は孝秀さまのようでそうではなくて
少しでも痛みから逃れようとした肩を押さえつけられた。

このまま意識が薄れてくれたら……と思っていると
「いい子だ、いい子だ、もう少しだから、辛抱してくれよ」という声は優しくて、
けれどその優しい声とは裏腹のさっきよりも強い痛みが繰り返し襲い掛かってくる。

私は、何がいけなかったのだろう。
スエは混乱した頭で考えた。
「卑しいふしだらな商売をしたこと」
「孝秀さまという美しいお方を分不相応にも好きになったこと」
孝秀さまを好きになった罰なのだと考えたら、我慢できるような気がした。

*********
「女将さん、どうしてうちのお馴染みでもない、あんな強欲で品のなさそうな人にスエちゃんの水揚げを。女将さんなら、もう少し気をつけてくださるのかと……。いくらなんでも可哀想すぎます」

もうすぐ年季が明けようという千鳥は、賢くて女将にもはっきりと物を言う。
「わかっているけど仕方がなかったんだよ。本当はうちで預かるつもりもなかったんだけどね。」
「じゃあ、若槻って人に押し付けられたということですか」
「そういう言い方もできるね。ほうっておいたら、外地なんかの、下手したら二度と日本の土を踏めないようなところに売られてしまうところだ。」
「ということは、若槻って人が助けたということでしょうか。」
「そんな親切な男ではないけどね、あのヤクザの出来損ないは。
あの男とはこれ以上かかわりになるつもりはないし、倉持ナントカの旦那とも今日限りだ。あんなのが上にいたんではあの材木屋も長くないよ。私の勘ではね。
当然だが、ナントカさまとかいう堅物の息子も追い返す。
一番の悪党はあの堅物だ。自分は善人だと信じて疑ったことがないぶん、一層質が悪い。」

女将はしゃべり続けた。
「可哀想だが、最初が辛いのは当たり前だ。
逃げられないようにして、ひと思いに入れられたら、あきらめもつくだろ。
朱音なんて、丸福呉服のご隠居で、お前、いつ女になったのか、わからないんだろ。」
黙って聞いていた朱音が恥ずかしそうに笑った。
「ちょっと痛がったら、無理をしないで続きは次にって、お前、全部入るまでに何回通わせたんだ?」
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