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女鑑~おんなかがみ~
第7章 離心
若槻は再び、倉持の大旦那に呼ばれた。茶室で長く待たされ、その間に娘が茶を立てた。
「待たせたな、急に呼びつけてすまん」
と言いながら入ってきた大旦那はまず
「若槻さん、今回はこの娘の操子の正直のおかげで救われましてな。もしこれが、あの愚息の手引きでもしていたら、もっとやっかいなことになっていたと思うと、礼を言わねばならんですなあ。まあ、息子のほうが、何とか無事に大山氏との話がまとまれば、次は娘の嫁ぎ先も考えねばと、また、いろいろ世話になるかと思いますが」
などと話した。
若槻は茶をすすりながら、
「あ、こちらが操子さま。正直で親孝行で、そのうえお美しいお嬢様をお持ちで、将来がお楽しみでございましょうな」と話を合わせた。
娘は少し顔を赤らめながら、照れくさそうにうつむいた。
倉持は娘に茶だけ立てさせると、
「操子、ご苦労、もう下がりなさい。お母様のお手伝いをするのだよ」と言って娘を下がらせた。
「ではどうぞ、ごゆっくりお過ごしください」と丁寧な作法で出てゆく娘の姿を若槻は見送った。
「待たせたな、急に呼びつけてすまん」
と言いながら入ってきた大旦那はまず
「若槻さん、今回はこの娘の操子の正直のおかげで救われましてな。もしこれが、あの愚息の手引きでもしていたら、もっとやっかいなことになっていたと思うと、礼を言わねばならんですなあ。まあ、息子のほうが、何とか無事に大山氏との話がまとまれば、次は娘の嫁ぎ先も考えねばと、また、いろいろ世話になるかと思いますが」
などと話した。
若槻は茶をすすりながら、
「あ、こちらが操子さま。正直で親孝行で、そのうえお美しいお嬢様をお持ちで、将来がお楽しみでございましょうな」と話を合わせた。
娘は少し顔を赤らめながら、照れくさそうにうつむいた。
倉持は娘に茶だけ立てさせると、
「操子、ご苦労、もう下がりなさい。お母様のお手伝いをするのだよ」と言って娘を下がらせた。
「ではどうぞ、ごゆっくりお過ごしください」と丁寧な作法で出てゆく娘の姿を若槻は見送った。