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Sugar Box
第6章 黄色い水仙を抱き締めて * 中 *
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「乃さん・・・待っててくれるんじゃ、なかったの?」
シャワーを浴びて出て来ると彼は、再びソファーで眠っていた。最近よく眠っているのを見かける。
医者に言わせると記憶喪失で見た目には、判らなくっても精神疲労をしているのだとか。だから睡眠は、心身共に癒やしてる時間なのだと言う。
「乃さん・・・ごめんね。本当は、傍に居たいけど・・・。他の人の香りには、耐えられない・・・。」
子どものような寝顔をしている彼にそう告げてキャリーケースに当分の荷物を詰め込んだ。
「良い夢を・・・・・・」
ダイニングテーブルに手紙を置いて部屋を出た。
「はあー・・・」
外は、朝陽が昇り始めたばかりで空気も澄んでいた。
「皮肉すぎないかな・・・」
彼が自分を忘れても関係が呆気なく終わってしまっても世界は、なにひとつ変わらない。