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Sugar Box
第7章  黄色い水仙を抱き締めて  * 後 *
  


 自分が記憶を無くしても惹かれていると気が付いた。

(「乃さん・・・」)

 優しくて、懐かしい面影が脳裏に過る。シルエットと声だけ。しかし・・・いまは、奴が重なって視える。


「っ!!?」


 自分の愚かさに気が付いて慌ててアパートに戻った。
 気になるのは、イライラするのは・・・記憶を失ってもアイツのことを“好きだから”だ。

 このモヤモヤは、“好き”だと口に出来ないから。


「月瀬っ!!」


 アパートに入り声を掛けた。しかし反応は、ない。


「無理、させたからな・・・。」


 身体の負担は、判っている。だからゆっくりと緊張しながらドアを叩いた。

 やはり反応は・・・ない。


「月瀬・・・」


 そっと、声を掛けてドアをゆっくりと開ける。


「月瀬・・・入るぞ。」


 気を失ったのを放置して来たのだ。気遣いつつ静かに入る。


  
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