この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Sugar Box
第4章 ムーン・トリック
お店は、酒場だったのだから暖かくって当然だ。外は、息が白くなるほどに寒い。
「追いかけても来ないの・・・全く。なにが〝俺も帰る〟だ。」
少し歩いて振り返ると中では、楽しそうにグラスを傾ける彼の姿があった。
「はあー・・・馬鹿みたい。」
彼が誘ってくれるからこの酒の席に参加したのに・・・案の定2人でなんて夢の又夢だった。
「綺麗な満月だな・・・」
歩きながら空を見上げると美しい満月が見えた。
「満月に願い事すると叶うんだっけ・・・?」
昔どこかのおとぎ話しで訊いたか読んだかした話し・・・を思い出した。
「はあー・・・乃さんが、僕にだけ頼ればいいのに。」
下らないけれどつい口を付いた。〝寂しい〟と素直にサラリと言えればいいのだけれど・・・性格がそれをさせない。出来ない。
彼は、人気者だ。いつ離れてもおかしくない。