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Sugar Box
第5章 黄色い水仙を抱き締めて * 前 *
「黒峰さんが・・・・・・」
「え・・・・・・っ??」
その電話を最後まで訊いては、いなかった。すぐに大学を飛び出して走った。
彼は、子どもを庇って事故に遭っていた。1番に電話が来なかったことなどどうでもいい。
彼が無事かどうか、それだけが気になった。タクシーなど普段使わないのに早く病院に着きたくてタクシーに乗り込んだ。
心臓が早鐘のように動いている。彼に逢いたい。逢ったら言えなかったことを言うと決めてタクシーを降りた。
「氷さんっ!!」
「玲くんっ。」
先に来ていた先輩に駆け寄った。
「黒峰さんはっ?」
「落ち着いて、玲くん。いま、処置中だから・・・」
「そう、ですか・・・」
「心配ないよ。すぐに終わるよ。大丈夫だよ・・・」
「はい、はい・・・っ。」
震える身体を抱き締められて少し不安が落ち着いた。